Q. ガンダムで木製にエネルギーとしてヘリウム3を採集に行くという描写が時折出るのですが、どのようにエネルギーとして使うのですか

A. ご質問ありがとうございます。ガンダムシリーズ、特に宇宙世紀を舞台にした作品で描かれる「木星でのヘリウム3採集」は、物語の根幹を支える非常に重要な設定です。

なぜわざわざ木星まで行き、どのようにしてエネルギーとして使うのか、順を追って解説します。

1. ヘリウム3(³He)とは? なぜ木星まで行くのか?

まず、エネルギー源となる「ヘリウム3」そのものについてです。

ガンダムの世界では、人類が宇宙に進出し、モビルスーツや宇宙戦艦、スペースコロニーを維持するために莫大なエネルギーが必要になりました。地球圏(地球や月)で得られる量では全く足りないため、豊富なヘリウム3が眠る木星まで、危険で長大な航海をして採集しに行く必要がある、という設定です。

『機動戦士Ζガンダム』に登場するパプテマス・シロッコが率いる木星船団「ジュピトリス」は、まさにこの採集任務を行っていた船団です。

2. ヘリウム3をエネルギーに変える仕組み:「核融合反応」

ここがご質問の核心部分です。ヘリウム3は「核融合炉」の燃料として使われます。

核融合とは?

太陽が輝いているのと同じ原理です。軽い原子の核同士を無理やり合体(融合)させると、少し重い原子の核に変わります。このとき、質量のほんの一部が莫大なエネルギーに変わる、という現象を利用します。

ガンダム世界で利用される「D-³He反応」

ガンダムのモビルスーツなどに搭載されている「ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉」は、主に以下の核融合反応を利用していると設定されています。

D(重水素) + ³He(ヘリウム3) → ⁴He(ヘリウム4) + p(陽子) + 莫大なエネルギー

これを分かりやすく言うと、
重水素(D)とヘリウム3(³He)を、超高温・超高圧の炉の中でぶつけると、安全なヘリウム4と陽子に変わり、その過程でとてつもないエネルギーが生まれる
ということです。

なぜこの反応が理想的なのか?

この「D-³He反応」には、他の核融合反応に比べて非常に優れた利点があります。

  1. クリーンで安全: この反応では、厄介な中性子がほとんど発生しません。中性子は、原子炉の壁などを放射化させ、高レベル放射性廃棄物を生む原因となります。中性子が出ないということは、炉が劣化しにくく、環境への負荷も極めて低い「夢のエネルギー」と言えます。
  2. 高効率: わずかな燃料から、現在の原子力発電(核分裂)とは比べ物にならないほどの巨大なエネルギーを取り出すことができます。

このエネルギーがあるからこそ、モビルスーツは巨体を動かし、ビームライフルやビームサーベルといった強力な兵器を使用できるのです。

まとめ

ガンダムにおけるヘリウム3のエネルギー利用をまとめると、以下のようになります。

  1. 採集場所: 地球圏では希少な「ヘリウム3」を、それが豊富に存在する木星まで採集しに行く。
  2. 利用方法: モビルスーツや戦艦の動力源である「熱核融合炉」の燃料として、「重水素」と共に使う。
  3. エネルギー変換の仕組み: 「D-³He核融合反応」を起こすことで、クリーンかつ莫大なエネルギーを発生させる。

この設定は、ガンダムの世界に科学的な説得力を与えるだけでなく、「木星帰りの男」シロッコのようなキャラクターの背景や、エネルギー資源を巡る地球圏の政治・経済ドラマに深みを与える重要な要素となっています。

Q. モビルスーツのパワーパックを破壊すると放射線が出るという描写を見た気がするのですが木のせいでしょうか

A. いえ、それは気のせいではありません。鋭いご指摘です。
「ヘリウム3を使った核融合はクリーン」という説明と、「MSの動力炉が破壊されると放射線が出る」という描写は、一見すると矛盾しているように感じられますよね。

しかし、これはガンダムの世界設定において両立するものであり、その理由を解説します。

結論:正常運転時はクリーン、破壊時は危険

ポイントは「正常に動いている時」と「破壊された時」の違いです。

南極条約との関連

一年戦争の初期に結ばれた「南極条約」では、NBC兵器(核・生物・化学兵器)の使用が禁止されました。
しかし、モビルスーツの動力炉が破壊されれば、結果的に核兵器を使ったのと同様の汚染を引き起こす可能性があるため、「動力炉を意図的に狙って誘爆させる行為」や「大都市、コロニー内での戦闘」なども条約や慣習で制限されるようになります。

このルールがあるからこそ、逆にこれを破る行為(例えば『0083』のデラーズ・フリートによるコロニー落としなど)が「非人道的な大罪」として描かれるのです。

まとめ

この「平常時は便利でクリーンだが、一度壊れれば核兵器並みに危険」という二面性が、モビルスーツという兵器にリアリティと恐ろしさを与えている重要な設定と言えるでしょう。